本年度は、前年度から継続中の『法学教室』連載論文を完結した。すなわち、同誌に、「神の天皇から国民の天皇へ」(4月号)、「行政一致から政教分離へ」(5月号).「イギリス型議員内閣利の『慣行』から『成文化』へ」(6月号)、「行政型国家から司法権優位の体制へ」(7月号)、「文語体憲法から口語体の憲法へ」(8月号)を記載した。これによって、日本国憲法法制定前後の東京帝国大学法学部において、どのような内容の憲法講義が行われたかについて、実証的に解明できたものと考える。と同時に、本連載論文により、戦前の立憲主義的憲法学説が、新たな憲法制定に直面して、その基本的な枠組みをどのように維持しつつ、組み変えていったかを明かにしたものと思う。また、上述の作業と併行して、昨年度から続けている入江・佐藤両文書の整理を行った。今年度は、主として、松本委員会が調査研究のために収集した各国の立法例、各種の論文、民間の憲法改正案等についてその整理を試みた。88件の原資料について、内容・執筆者・入手経路等の調査を行い、配列を決めたうえで、印刷に回した。現在、校正(第二校)に入っており、また、解題の執筆作業に入っている。本年秋には公刊できると考えている。
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