本研究は、行政および財政の、いわば「市場原理化」または「民営化」傾向の渦中にあって、改めて行財政の法理としての公共性(法的存在理由)を問う研究の一環として位置づけられる。古典的な公と私の論理およびそれに対応した統治構造(国や地方公共団体)の存在理由(正統性)や公的規制の法理を具体的法制度の検討を通して改めて問い直し、「市場原理化」または「民営化」を強調する余り見失われているかに見える公私の(あるべき)調整の法理の再発見を試みた。具体的には歳入構造の変化の傾向についての法理論的分析を行うものであるが、行政の公共性との関係を重視しているように、それにとどまらない。どのような行政が行われるべきかという国民代表議会での精査と判断にもとづいて、それに必要かつふさわしい歳入や歳入の方法が選択されるべきことは当然のことであり、歳入構造は、当該歳入によって賄われる行政の質と量によって評価を受けるべきものであることはいうまでもない。行政の質と量の権利論からする法的精査が、歳入構造の法理論的検討と表裏一体の関係にあることになる。このような行政と財政の法的関係(相互依存関係または相互規定関係)に着目することによって、これらの新しい歳入に対する法的統制の可否・適否をめぐる法的問題を発見して、立法課題も提示しえたものと考えている。その意味から、最終年度に浮上してきた財政構造改革法をめぐる諸問題について、同法を「立法による財政改革」を実現する実定法として捉え、とくに「財政と行政の相互規定性の法的限界」という視点から、同法の存在意義の検討および「立法による財政改革」の課題を明らかにすることに努めた。
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