この研究課題は、行政の意思形成過程を媒介にして、行政機関相互間の関係を検討する中で、行政組織内部の規範の在り方を検討しようとするものであった。行政組織法は、これまでも、行政法の基本原則である法治主義との関係、機関相互間の合意の有効性・拘束力、一般的権限分配と一体性等、多数の問題点を、内包するものであった。それに加えて、行政改革・規制緩和・民営化の下、行政の課題・任務の再検討及び新しい行政組織の形成が、課題とされてきている。また、後者との関係で、特に近時は、協導行政(Kooperative Verwaltung)観念の導入や統合(Integration)等より、根底的な枠組までもが問われてきている。 「行政の意思形成過程と行政内部的機能の行政法学的及び行政学的研究」という研究課題で、この2年間科学研究補助金を交付されるなかで、特に、それ自体は相当以前から意識されてきてはいるが、近時再検討を受ける中で注目を集められてきている「協導」観念に注目する議論を、比較法の素材の一つとして検討してきた。Kooperationは、ドイツにおいては、一方で、環境保護法の原則の一つとされ、行為規範論批判としても活発な議論をなし、行政契約の再検討など伝統的な作用法領域等においても、有力な見解になっている。さらに、現状認識の枠組として、新しい住民参加論、住民責任論等に注目されてきているし、また、行政組織論としても、有意義な議論を展開してきている。協導国家、協導行政概念は、近時、福祉国家論の再検討と連動して、行政の任務の再検討、民間の活力の活性化等を意図した民営化が検討課題になるが、こうした議論をRainer Pitschas シュパイヤー行政学院教授の議論に見いだすこともできる。 なお、我国地方公共団体のアンケート調査は、情報公開・個人情報保護との関係も含めて、今後も継続されるべきであろうが、従来の組織法論との関連で、位置づけることとなった。
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