地方分権推進委員会の第一次勧告が出され(1996年12月20日)、国と地方公共団体との関係についての一定の方向が示された。しかし、本研究が目的とする、地方公共団体そのものの行政体制等に関しては、問題は先送りされた。いわば、行政そのもののあり方、(それを行政の「現代化」といっても良いかもしれない)、本研究でいうところの公私混合行政協働システムの具体のあり方に関する提言は示唆にとどまる。しかし、ドイツにおける新しい自治体運営については、Kommunale Gemeinschaftstelle fuer Verwaltungsvereinfachung(自治体行政簡素化機構)を中心に、新しいモデルが低唱されており、実験段階に入っている。オランダのTlrburg市 Duisburg市など、すでに自治体組織・運営の新たな実験が始まっている。これまでの官僚主義的な官庁行政から、市場にまねたサービス企業化の方向が模索されている。そこでは、政治と行政の責任領域の画定、行政トップと行政を直接執行する各専門行政領域との間の契約管理(Kontraktmanagement)の導入、それぞれの行政レヴェルでのコントローリング(Controlling)手法による管理の導入など、興味深い傾向が現れている。ただ、これらの新しい自治体運営は、法理論的に見れば、機能主義国家への国家の転換、行政の「現代化」の名のもとでの経済的効率優先の考え方は、ドイツの憲法的要請である社会的法治国家性を根本から揺さぶるものになっている。今後、経済的効率性に対する「憲法的社会的効率性」とでもいうべき効率性の問題が法的な問題として議論されよう。
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