今年度は.主に欧州共同体(以下.EUと表記)における補完性原理について検討を加えた。特に以下の点に着目して研究を進めた。まず.EUと各構成国との権限関係について.従来行なわれていた分類に即して整理を試みた。EUの持つ権限の側からすると.概念的に見れば.EUの専属的権限.各構成国との競合的権限に分けることができる。その中で.補完性原理の働く権限関係は.競合的権限に限られるとされる。しかし.このような権限の二分法については問題があるように思われる。実際に.専属的権限.競合的権限を分かつメルクマ-ルは.これまで不明確であった。そのため.今後は各権限のカタログ化が必要であると思われる。さらに.研究において留意した点に.EUの地域委員会の果たしている役割がある。EUと各構成国との権限関係のみならず.構成国内の地域の問題処理とEUとの関係が重要なものとなるからである。 来年度は.主にドイツにおいて.連邦政府と州政府との権限関係に補完性原理が果たしている役割について考察を加える。それと並行して.EUの補完性原理についても.権限のカタログ化のみならず.個別の領域(社会保障.環境問題等)において.当該原理が果たしている役割を具体的に研究を進めていく。また.これらを踏まえて.日本において現在進行している地方分権の動きについても若干の考察を加える。EUおよびドイツの補完性原理が.現在のわが国の分権の議論にいかなる寄与ができるかについて研究を進める。
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