平成8年度は本研究の初年度であるので、研究は途上である。順次、いくつかの論文に成果を発表している。 日本にやってくる「来日外国人」が増加するにしたがって犯罪が増加する傾向にあることについては社会的関心もある一方で、逮捕拘禁に伴う刑事手続及びその後の処遇に関しては法の適正手続の観点から特に外国人としての人権への配慮が必要でもある。例えば、通訳の確保にはじまり処遇上の問題もある。これらの問題につき、平成8年11月に開催された国際人権法学会の報告者として報告を行った。この報告については、国際人権法学会の機関紙『国際人権』8号に論文として掲載する(97年6月刊予定)。 また、「外国人労働者問題と国際人権法」と題する論文を『外国人の権利の現状』(日本弁護士連合会編集、明石書店より97年6月刊予定)に掲載する。 わが国の出入国管理法上の問題点を検討した論文をカナダのブリティッシュ・コロンビア大学法学雑誌に掲載したことがある。イギリスの出版社(Edward Elgar Publishing Ltd.)より、この論文を"Law and Migration"と題する単行本に掲載したいとの要望がよせられたので了解した。出版までに若干の時間があるので、内容をup-to-dateなものにしたい。 外国人の人権問題に関する文献資料等のデータベース化については、ハードウエアとしてパソコン1台とスキャナを新規導入し、ソフトウエアにはマイクロソフトのAccess95を使用して、データ化の準備作業を開始した。 ほかに、「東アジアと国際人権論争」(『東アジアの伝統と異化』熊本大学地域研究叢書(仮称)、九州大学出版会、現在印刷中97年5月刊予定)をまとめた。
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