扶養、監護権、訪問権に焦点をあててアメリカにおける継親子関係をめぐる法状況を分析・検討した前稿(「アメリカにおける継親子関係をめぐる法状況」アルテス・リベラレス[岩手大学人文社会科学部紀要]第57号135-153頁[1995年])に続いて、そこで積み残した問題、すなわち、アメリカ無遺言相続法上の継子の地位について考察を加えた。アメリカ無遺言相続法は、基本的に、血縁と被相続人の意思の推定を根拠に相続人の範囲を確定しているが、非血縁を配偶者および養子にとどめ、あくまで血縁主義にこだわる、安定性重視の法規制を維持している。その中にあって、カリフォルニア州は特異な存在である。というのは、同州検認法6454条によれば、(1)継親子関係が存在していること、(2)当該関係が継子の未成年の間に開始したこと、(3)当該関係が当事者の共同の生涯にわたり継続したこと、(4)明白かつ確信を抱くに足る証拠により、継親が継子を養子収養したであろうことを立証すること、(5)明白かつ確信を抱くに足る証拠により、法的障碍がなければ当該養子収養がなされたことを立証すること、の5つの要件を充足するとき、継親子関係を法的親子関係を擬制し、継子は継親を相続できるものと規定しているからである。ここには、無遺言相続法が依拠してきた準拠枠が、安定性から公正性へと転換されるべきこと、伝統的家族だけでなく、アメリカに多数存在する継親家族を含めた非伝統的家族をも射程に入れた一つの立法のあり方が示唆されている。そしてさらに、この規定には、継親子関係の実質を審査するための一つの基準が見い出されるのであり、継親子関係の法的規制のあり方を構想するうえで、今後、法的権利を付与するに値する継親子関係とは果たして何か、ということを検討するための一つの素材を提供するものである。継親子関係の社会的実態につき、経験的・実証的研究が次に求められる所以である。
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