1 サービス契約法の研究は、現実の取引から生じる具体的な問題を掘り下げることによって、内在する本質的問題に迫る各論からのアプローチと、債権総論又は契約総論のレベルでの規範を再検討することによって現実の諸問題に光をあてる総論からのアプローチとがある。そこで、平成7年度は主として各論からのアプローチをおこない、平成8年度にはそれに総論からのアプローチを加味するという手法をとった。また、また、同じサービス契約とはいっても、消費者取引と事業者間取引とでは、かなり問題点の所在が異なる。そこで、松本が消費者取引を対象とし、中田が事業者間取引を対象として分析した。対象とされた主な取引は、教育サービス、美容サービス、金融サービス、電気通信サービス、フランチャイズ契約、特約店契約などである。 2 以上の課題を遂行するために、サービス取引の諸問題に取り組む実務家からのヒアリング、国内外の文献を中心とする資料収集を行い、ほぼ1月に1度の割合で研究組織構成員の間で意見交換をした。 3 以上のような各論からのアプローチを踏まえ、消費者取引では、継続的役務提供契約における中途解約権の法的構成、不公正契約条項の規制、不当勧誘の規制、また、事業者間取引では、債務の非対称性、関係価値、債務のユニットと契約の複合性、開発リスクについて、総論からのアプローチによる分析を行った。これらの諸問題は、いずれも、現行民法典には明示的には規定されていない点であり、今後の一般契約法理論の発展にとっても重要な論点である。
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