罹災都市借地借家臨時処理法2条を、中心に、大震災に伴う借家の法律問題を検討した。その結果、(1)優先借地権に関して契約締結を強制する根拠についての立法時の考え方が、現在においては説得的ではない、(2)優先借地権の設定が、その内容の確定を伴わずに行なわれ点は、新たな法律関係の形成という観点から、適切ではない、(3)集合賃貸住宅についての処理枠組みが明確でない、(4)優先借地権が成立した場合であっても、土地に抵当権が設定されていると、その実行により優先借地権は消滅せざるをえず、そのことは共同抵当と法定地上権との関係についての最近の最高裁判決(最高裁平成9年2月14日判決)よって確認されたことが明らかになった。そのうえで、(4)同法同条を廃止すべきである、そうでないとしても、(5)優先借地権の成立要件を主として手続面で厳格にする、(6)優先借地権として成立する借地権を定期借地権(より具体的には、建物譲渡特約付の定期借地権。借地借家法23条)とするという方策が考えられることが明らかになった。 以上のように、罹災都市借地借家臨時処理法2条に関しては、現行法の維持は困難である。今後、阪神淡路大震災と同様の都市直下型地震に、日本の他の地域が襲われないという保障はない。それまでに、法の見直しを現実化させておかないと、阪神淡路大震災と同様の法の適用をめぐる困難な状況が生起することは目に見えている。
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