本研究は、都市計画法制との関連で私的土地所有権の構造的特徴を明らかにすることを目的とするものである。ことに所有権の内在的な制限の論理、換言すれば、公的介入を不可避とする都市的土地所有権の「属性」を私法的な立場から論究しようと試みた。問題の分析視角は都市的土地所有権(建築権)の公法的規制一般を抽象的に論ずるのではなく、むしろ具体的な建築行政との関連で土地所有権のあり方を考えることとした。取り上げた現実課題は景観問題であり、全国の自治体が景観条例等を介して、「土地所有権の自由」という伝統的な観念の桎梏と格闘しながら、都市景観等の保護のために私人の建築行為に対してさまざまな規制を実施しているが、その景観行政の理論的根拠を提示することに的を絞った。 その結果、一応の基本方向を示唆することができたように思われる。まず、本研究の序論では、都市的土地所有権の属性的特質について簡単な言及をしている。つぎに第一部では、序論で示した仮説を念頭に置きながら、景観規制と都市的土地所有権の問題を取り上げて、具体的な景観行政との関係で「所有権の制限」の理論的根拠につき論究している。 第二部は、景観法制の歴史的変遷(「明治期から戦前まで」と「戦後から現在まで」とに大別している)を取り上げて、序論と第一部で提案した理論を沿革的に検証しようとしたものである。 なお、終わりに、本研究途上で調査・整理した景観条例等を資料とし収録した。
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