今年度は、わが国ではこれまで殆ど行われては来なかった「救済法」について、沿革的・比較法的研究を行い、現行民事訴訟法・民事執行法等における解釈論の再構築を試みる点に、最大の特色と独創性そして意義があると考え、本研究に着手した。特に、わが国の民事手続に見られる「救済規範」について、単に総論的分析だけでなく、同時並行的に各論的分析も行った。その結果、裏面に掲載したようないくつかの成果を獲得することができた。ただ、当初目的としていた、わが国の裁判例に見られる「救済規範」の分析は、現在進行中であり、その成果の公刊は、来年度に持ち越さざるを得なかった。また、総論的考察も、序説的な論文をまとめたが、より広範にわたる本格的なものの公刊は、来年度以降に行いたい。さらに、わが国における救済法の系譜を辿る研究も予定していたが、やや資料不足の状態であり、この研究の部分も、次年度以降に行いたい。 なお、今年度は、日本・アメリカ合衆国・ドイツ各法関係における民事訴訟法・救済法関係の図書等を購入し、研究の基礎となる文献の多くを、入手することができた。さらにまた、特にわが国の古い文献や外国語文献を収集するために、東大法学部図書館、同外国文献センター、上智大学図書館、日本大学法学部図書館等へ赴き、数多くの貴重な資料を複写することができた。 このように、研究課題に関する本格的研究の着手段階を、おおむね満足の行くかたちで終了することができたので、本年度の基礎的研究の成果を踏まえて、平成9、10年度の研究活動を推進して行きたい。
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