これまでに収集した資料とその研究成果とを踏まえて、今年度は以下のような研究を行うことができた。 まず、昨年度に引き続き、「わが国における『救済法』に関するの研究」を、様々な各論的な論点について行った。第1に、「わが国の裁判例に見られる『救済規範』の分析」として、例えば、「将来給付の訴え」、「差止訴訟の申立主義」、「差止訴訟の当事者適格」、「訴状の送達」、「不法行為法(交通事故訴訟)」、「法律上の争訟」、「団体の内部紛争」、「企業の大規模不法行為と倒産」、「大規模訴訟の特則と民事救済」、「医療過誤訴訟と救済」等をめぐる様々な裁判例等を批判的に分析検討して、救済法的視点から、いくつかの提言を行うことができた。例えば、将来給付の訴えにおける「請求権確認説」や、差止訴訟における「申立事項の段階的特定」とそれに即応する形での「手続段階ごとの当事者適格説」を提唱し、また、当事者による手作りの救済を可能とするための送達のあり方に対する提言を行い、交通事故訴訟における紛争当事者の救済形成のための手続関与のあり方、負担加重気味な法律上の争訟概念の救済規範的な捉え方、団体の内部紛争における関係者の手続関与のあり方などを、明らかにした。第2に、このような各論的考察とともに、比較法的考察をも行った。ドイツ法においては、イミッション訴訟・執行過程をめぐる判例・学説を昨年度に引き続いて研究し、アメリカ法においては、不法行為訴訟をめぐる判例・学説を検討した。第3に、「わが国における救済法の系譜的考察」として、明治期における法典継受と救済法の問題および戦前の民法学における救済観について研究を進めたが、この点については、必ずしも十分な成果をあげられておらず、今後の継続的な課題としたい。第4に、これらの各論的・比較法的・沿革的考察を踏まえて、帰納考察として、近い将来に「わが国における救済法の総論的考察」を明らかにしたいと考えている。 なお、研究成果の詳細については、研究成果報告書(冊子体)を参照。
|