環境問題を環境管理・保全という角度から検討する際、重要な機能を有するのは「何を、どのように、どの程度まで管理・保全するのか」ということを判断するための資料である。環境問題はアメニティーをもその概念の中に包摂している。そのような状況で、かかる判断資料、つまり環境情報の必要性は決定的である。とりわけ企業施設内における環境情報が重要である。しかし、かかる環境情報はある意味で企業に独占されている。公害訴訟において、このような状態が被害者による企業側の有責性を立証する際のネックとなっていた。さらに、環境管理・保全に関する市民活動の促進にも影響を及ぼす。かような認識のもと環境情報請求権あるいは情報開示請求権が法的論議の俎上にのぼる所以である。 環境情報を取得するためには実体法上の根拠が必要である。情報公開法の制定が間近である。しかし、同法(案)は任意提出情報の不開示を前提とした提出が認められている。そうだとすれば、実質上、本法律の運用しだいでは、環境情報の開示を凍結する可能性が生ずる。また、行政庁が環境情報を取得していない場合、一般市民あるいは地域住民は環境情報の直接取得は不可能である。したがって、情報公開法の重要な意義を認めつつ、別途、環境情報請求権の実体法上の成立の可能性を模索する必要がある。本稿は、かかる環境情報請求権を企業側の環境情報開示義務という観点から実体法上の根拠を検討する。 公害防止協定の法的性格を解釈上再構成して、企業側の環境情報報告義務を検討した。当該協定には地域住民型公害防止協定と地方自冶体型公害防止協定とがある。双方の協定を民事(私法)契約と捉え、かかる契約を非典型的契約としつつ委任事務処理契約(委任契約)の規定を準用することにより法的性格を画定する。しかる後、かかる契約、委任的事務処理契約の義務論に言及し、独立した忠実義務の義務内容の中に環境情報報告義務の成立を主張しようとするものである。
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