我が国では、「自白をとるか、とられないか」という次元での争いが、捜査から公判そして学界における主たる関心になっている。刑事手続における「55年体制」的思考である。これをいかに克服するか、が本研究の基本的問題意識であるが、本年度は、薬物事件と組織犯罪(主にオウム真理経関連事件)に焦点をあてて、関連資料の収集把握、事件の周辺の取材、および関連事件の公判傍聴などの活動を行い、問題を考える素材の収集に力点を置いた。この中で、次の研究および成果を挙げた。 (1)オウム真理教関連事件の調査を通じて、接見禁止の運用が、自白をしているか否かを事実上の判断基準にしている傾向について問題指摘した。(2)勾留状態を利用した余罪追及の広がりを調査し、解釈論上「自首」の成否という形でまとめた。(3)外国人事件はじめ、各種事件の捜査段階の取調べによる供述を柱とする事件の組立が、ときに歪んだ起訴を生んでいないかと思わせる事例があるので、その迫跡調査を進めた。その一部の成果は、「偽造調書と証拠排除の範囲」としてまとめた。(4)組織犯罪を探るため、外国人関連犯罪を追跡調査中であるが、これに関するとりまとめは、次年度に予定している。
|