研究概要 |
今年度の成果は、「日本おける最初の無作意抽出による団体調査」の実施に成功したことである。当初、『事業所統計』母集団の標本を基にしてサーベイ分析を行うべく準備を進めた。しかし、総務庁統計局との数次の交渉によってもこれを母集団とするにはさらなる協議が必要となり、今年度は見送ることになった。替わって「電話帳タウンページ」の団体・組合欄を基にして、東京・茨城地区約25000の団体から、4000の団体を無作意に抽出し、36問11ページからなる「団体の基礎構造に関する調査」を行った。現在、その回答を整理中である。また韓国ソウルおよびその近郊でも同様の調査を行うべく、韓国高麗大学の廉載鎬教授と準備作業を開始した。 この調査は、特定の名簿ではなく、網羅的な電話帳を基礎としたランダム調査である点で、世界ではじめて日本の団体セクターの実像に迫るものである。 他方で、利益集団セクターの変容に関するこれまでの筆者の研究および先行研究を総括し、Interest Group Structure and Regime Change in Japan(Center for International and Security Studies,University of Maryland,69 pages)を発表した。この書物でこれまでの全国レヴェルの団体調査を総括し、先進国の団体データと比較しながら1993年以降の日本の政治状況がいかなる段階にあるかを体系的に論じた。さらにこの成果を受けて「日本の政治体制のベクトル転換:コ-ポラティズム化から多元主義化へ」を発表(『レヴァイアサン』20号)し、1989年以降政治体制の方向が次第に転じはじめていることを検証すべくつとめた。これらの研究は、今回の実証研究の仮説をなすものである。
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