西欧諸国において外国人の定住化と政治参加が進んでいるが、日本においても、ニューカマ-外国人の定住化が一部で見られる一方で、オールドカマ-外国人の政治参加の問題が浮上してきている。まず、西欧諸国での外国人参政権の行使の実態や投票率について検討し、相対的に近い投票率の原因、外国人票と政党との関係について考察した。日本では、外国人の地方参政権が憲法上違法ではないとの判断が下された。この点に関して、それが現在に至っても実現していない理由、西欧諸国と違って日本での実現当付が草の根の外国人であること、外国人といっても一枚岩ではなく、すべての外国人が参政権に賛成しているわけではないこと、この問題と関連して、海外の日本国籍保有者の間で国政選挙への参加希望が強まっていること、日本社会側も意見は一様ではなく、世代や地域により一定の差異があることが明らかとなった。それとともに外国人のまま参政権を含めた権利拡大(デニズンシップ)が良いのか、それとも国籍の変更を考るのが良いのかという点で、大きな分岐が存在する。また西欧では旧ソ連からのドイツ系住民やユダヤ系住民の移動が見られ、これらは「エスニック移民」として扱われているが、日本でも、近年におけるラテンアメリカからの日系人の流入によって「エスニック移民」の現象が見られる。しかし、欧州の事例と異なるのは、日本政府や日本社会側の日本人への視点と日本人自身の社会学的実態との間に大きなズレが存在するという点である。このため、彼らは日本に定住するに至っていない。外国人の政治参加の問題は、いわゆる定住外国人に加えてこうした「エスニック移民」も含めて総合的に考える必要がある。
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