今年度の研究は50年代の公選知事と経済発展に関するマクロなデータ整理を行なうことと経済発展と「分権化」に関する研究文献の調査・収集を行なうことを主要な目的としていた。前者に関しては、従来から部分的には収集していた知事の個人別データをコンピュータに入力するとともに、知事に関する伝記資料、各府県の関連資料の補充を行い、後者については関連する外国文献を含むいくつかの資料収集を行なったことが今年度の主要な作業となった。各府県の経済指標に関するデータの整理は進めたが、細かい指標の入力を行なうまでには至っていない。今年度の資料の整理の限りで目に付くことは、知事公選制度の発足以後の10年余は比較的に知事の交替の頻度が多いことが明らかになる。その要因は知事の政策的要因だけでなく別の要因にあるようにも思われるが、知事職の安定性と経済発展の関係を分析することが今後の検討課題の一つとして浮び上がってきた。経済発展と「分権化」に関する関連文献のいくつかについて調査したが、本研究の観点から理論的な検討を行なったものは多くはない。途上国の経済発展との関連で「分権化」の意義を論じたものは若干の参考になる。データのコンピュータ入力の副産物として、インターネットにより米国の知事に対するアンケート資料を収集することができた。比較の視点から検討するために参考になる。次年度以降は、資料のより体系的な入力を継続するとともに詳細な分析に進む予定である。
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