今年度は当初の研究計画として、(1)具体的な府県の事例をとりあげて公選知事と経済発展政策の検討を行なうこと、(2)府県知事の政治的基盤と政治指導の特色の検討、(3)中央政府の地域開発政策の検討、を予定していた。このうち(1)、(2)に関しては、従来から進めてきた神奈川県、茨城県の知事に関する資料収集を継続した。特に地方税法改正問題が都市部と農村部の府県に与える影響の差異という観点で知事の活動を検討することが重要であることが明らかとなった。さらに、関西地域の大坂、京都、兵庫の3府県知事の伝記資料等を収集して比較検討を進めた。今後さらに詳しい分析が必要であるが、50年代の大都市部の府県の開発政策の課題は府県制度・大都市制度のありかたが大きな関連をもっているとの展望を持つことができた。計画の(3)は占領期の関係資料集の編集作業と関連させて進め、本研究課題との関係でも大きな収穫をあげることができた。一つは公選知事制度の成立前後の新資料の発掘と整理を行なうことができたことで、公選知事に対する職務執行命令制度の導入の経緯が明らかになっただけでなく、経済科学局、法務局などの占領当局者が公選知事制度の導入と地方自治法の制定に関して危惧を抱いており、それが地方自治法改正につながったことを具体的に明らかにすることができた。これらの新資料は資料集『地方自治(1)』(98年4月刊行予定)で解説をつけて発表する。第二に、占領期の北海道に対する開発政策に関する資料を収集することができたことで、中央政府の地域開発政策と公選知事の関連の一端を知ることができた。北海道の開発政策の資料についてはさらに詳しく分析を進める予定である。
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