本研究の目的は、戦後の公選知事制度の導入が実際にいかなる意味で府県の政治と経済のあり方を変化させたのかを考察することにある。3年間の研究期間を通じて、公選知事制度の導入とその実態に関する基本的資料の収集を行うとともに、これらの資料の分析を行うことができた。第一に、本研究の基礎部分にあたるものとして占領期の関係資料を収集・編集し『地方自治 I』、『地方自治 II』(丸善)としてそれぞれ1998年5、9月に刊行できた。ここに収めたのは大部分が英文資料で日本の学界では一部の研究者しか利用できなかったものである。今後この資料集を利用して50年代の地方政治研究がより積極化することを期待したい。また30年代から50年代までの日本側資料を一貫した視点で通観する『史料 日本の地方自治 第2巻』(学陽書房)を99年5月に刊行予定である。第二に、『地方自治 II』の資料を利用して「1950年の地方税法改正問題」を論文にまとめた。これはシャウプ勧告を受けて行われた1950年の地方税法改正を占領政策の優先目標の相克という観点から分析したものである。この地方税法改正に対する知事の行動の分析を加える予定である。第三に、新しい地方制度と地方税制の下で知事が採った経済発展政策に関する文献・資料収集を行った。これらを比較検討するための枠組みを、「占領下の知事」として口頭発表した。残された課題はこの試論をより充実・拡大発展させることである。
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