本年度は、一方で比較政治学における政策過程や政策フィードバックについて、新制度論の展開を踏まえて、分析枠組や方法論を検討した。また他方で、実際の日、米、スウェーデンの労働市場政策を具体的に考察するうえでのデータや資料の収集と整理をおこなった。 前者については、まず第一に、政策が、市民社会における特定の利益集団をターゲットにしたものなのか、それともより普遍的なものを指向しているのか、の違い(「ターゲット型」対「普遍型」の違い)に応じて理解すべき点を確認した。さらに第二に、その当該政策が、国家構造や市民社会における利益集団等の組織間関係の付置状況など、近年の新制度論が提起した諸要因によって、各国間で類似性と差異が生じること、第三に、それに関連して、政策のパフォーマンスも、そうした「制度的編成」を媒介として、フィードバックされていく点に着目しなければならないことをあらためて確認した。この点については、近年ロバート・プットナムが政策パフォーマンスの違いをそうした制度的観点、とくに市民社会レヴェルでのコミュニティに着目した視点を打ち出しているが、私自身も、そうした視点のもつ意義等についての拙論を脱稿した(未公刊)。 後者については、まずOECDやILOなどの統計的データのうち、近年ディスケット化されているものの一部(Historical Statistics)を購入したり、また雑誌・新聞等に掲載されているデータなどの切り抜きや複写などをしたりして、主に労働市場の実態を把握するようにつとめた。とくに日本を含めたOECDのデータに関連しては、データをパソコンに入力し、購入した統計ソフト等で若干の解析等をおこなっているところであり、これについても次年度中に中間的な報告を公表する予定である。
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