本研究は、ヨーロッパ連合(EU)およびドイツにおける統合的環境政策との比較の視点から、日本の環境政策の現状を調査・分析することを目的としている。統合的環境政策は、経済政策や社会政策など各政策領域において環境適合的という政策要素を統合すること、多次元レベルで政策を展開すること、さらにその政策の担い手の多様性という特徴をもっている。その目標は、エコロジー視点から産業社会を再構築することである。調査においては、市町村レベルに焦点を合わせた。 ヨーロッパ連合・ドイツにおいては、EU、連邦、州、市町村自治体レベルで環境政策が展開され、補完性の原則に基づき、より低いレベルにおいてより厳しい措置をとることが認められている。多次元レベルで政策展開により、プラス・サム・ゲームが志向される。また、ドイツにおいて統合的環境政策を実施するために環境省の権限強化の問題も指摘されている。市町村レベルでの環境政策は、ローカル・アジェンダ21の実施によって具体化されており、地域の多様な担い手の協力、市民参加が重視されている。 日本の環境政策においても、国、県、市町村レベルでの環境政策の結合化が試みられている。自治体での統合的環境政策の課題として、総合行政、行政・企業・市民など多様な担い手の役割分担・協力体制、行政全般の環境志向型・環境配慮型への転換、環境基本計画と進行管理が、あげられる。また、多摩地域にみられるように、環境団体・市民グループのネットワーク化が試みられている。自治体においても1998年から環境マネージメントの国際規格であるISO14001の認証取得が進んでいる。 今後、本調査で資料収集を行った東京都(多摩地域)、神奈川県(川崎市)などを事例にとって、都県と市町村レベルにおける統合的環境政策の実態とその課題を引き続き分析する予定である。
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