この三年間の研究で、出版・公開した論文は、三点に止まるが、今後1、2年かけて、上記研究課題についての論文の執筆を完成したいと考えている。 11に記した公表論文は三点であるが、400字原稿用紙になおせば、360枚に達する。「戦後日本政治学史断章(一)」で、全体の構造の第一章「戦後日本政治学の方向づけと制度化」と論じた。第一節「戦後政治学の方向づけ」では、戦後日本の政治学と進むべき方向と明示し、リードしてきた、丸山眞男の「科学としての政治学」論文(「人文」第2章)の内容を分析し、それが惹き起した波紋を論じた。第ニ節「戦後は未政治学の利度化」においては、アメリカ占領軍の間接支配のもとでの教育改革、とくに大学改革の結果として、政治学の法律学からの自立化が一応達成され、全国の国公私立の大学において、専門課目および教育科目の教養科目の「政治学」が設置され、政治学者の数が一躍増大し、またその中で1948年には、日本政治学会が設立された事情が分析されている。 「戦後日本政治学史断章(ニ)」では、第ニ章「戦後政治学史への諸アプローチ」で日本政治学会を中心とした戦後日本政治学史の先行研究(薮野祐三、大嶺喜夫等)が紹介・評価され、第三章「戦後政治学と丸山眞男・辻清明」は未完成であるが、三つ目の論文、「戦後日本政治と丸山眞男」では、丸山についての戦前・戦後の日本政治とのかかわりの分析がなされている。第(ニ)論文の第四章「戦後政治学の百花斉放-1920年代世代の登場-」は未完であるが、その第一説概況で、この世代登場の日本政治学史上の画期的意義が論じられ、第二節「戦後政治学のルネッサンスの諸相」では、福田吉〓「道徳哲学としての近世自然法」京極純一の「現代日本における政治的行動様式」論文、さらに岡義達、永井暢之助、石田雄等のさまざまな理論模型の試みが評価されている。
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