本研究の目的は、60年代以降の韓国における地域社会の変容を「都市型社会」の成立という視覚から検討し、主として、日本との対比で韓国における住民自治の可能性を探ることにあった。こうした、研究課題にそくして96年度には(1)戦後日本の地域社会の変容と自治体改革の経験の整理、(2)韓国の地方自治制度の変遷(3)韓国の社会変動に関連する統計の整理などをおこない、97年度には60年代以降の中央政府レベルの工業化政策が韓国の地域社会の変動に与えた影響を、京機道・富川市、慶尚南道・釜山市、済州道・済州市などいくつかの象徴的な都市を事例に検討した。 これらの研究を通して、およそ(1)韓国社会はおよそ60年代後半以降、「都市型社会」への「移行期」に入り80年代後半にいたってその「成立」をみたこと、(2)にもかかわらず、この間の極端な中央政府主導の工業化による都市間の構造的な較差の進展が、住民自治の成長の重大な阻害要因となっていること、(3)さらにそうした都市間の較差や住民自治の立ち遅れが、市民社会の側の住民運動や投票行動に見られる、中央指向的な利益表出のあり方にも深く関連していること、などが明らかとなった。 都市間の較差は、大都市ソウルに対する地方都市という関係はもとより、労働力の移動や金融や商品・情報流通などを介したソウルとの関係の仕方による地方都市間の較差としても現れる。こうした中央との関係を軸とする周辺都市の類型論をふまえ、2年間の研究成果を1998年度中に論文として仕上げたい。
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