研究概要 |
本年度の研究として、前年度までの、社会契約論に基づく、institutional arrangement gameを用いた、私的所有権の保護を目的とする民主制国家生成と発展の動学モデルをn人ゲームに拡張し、モデル分析を行った。得られた主要な結果は以下の通りである。 (i):自然状態(the state of nature)において、争い(盗難)が発生するか否かは人々の富の初期保有状態に依存して決定される。人々の富が一定量以下であれば、平和状態(the state of peace)が現出し、それ以上であれば戦場状態(the state of war)が現出する。 (ii):戦争状態において民主制国家が生成する十分条件は、人々の富の分布が比較的平等であることであり、必要条件は、絶対的に貧しい人々が存在しないことである。 (iii):動学的フレームワークにおいては、国家生成の必要条件が、限界消費性向(1-貯蓄率)が一定率以下であることが明らかになった。一定率以上であるときには、無限の期間にわたって平和状態が社会に現出し、人々の富は長期的に平等化することなることが示された。 (iv):動学的には、上で生成された国家は、一定の条件の下では、永続的なものではなく、必ず国家が崩壊するときがあることが示された。 上記の結果は"A Model of Hobbesian Economy",1996,Chiba University Economics association working paper series #96E018,by Kenichi sakakibara and Koichi Suga)にまとめられ、International Workshop on Game Theory and Politics(1996年7月,Spain)、理論計量経済学会96年度大会(1996年9月、大阪大学)、およびThe Winter Meeting of Econometric Society(1997年1月、New Orleans,USA)において口頭発表された。
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