研究課題/領域番号 |
08630006
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒田 達朗 名古屋大学, 情報文化学部, 教授 (00183319)
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研究分担者 |
兼本 雅章 , 経済学部, 助手 (50303582)
田渕 隆俊 東京大学, 経済学部, 教授 (70133014)
八木 匡 同志社大学, 経済学部, 助教授 (60200474)
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キーワード | 国際ハブ空港 / 経済効果 / 着陸料 / 国際公共財 |
研究概要 |
「ヒト」および「モノ」の国際的流動に決定的な影響を与える社会基盤としてまず挙げられるものは、大規模な国際空港であろう。我が国においてしばしば問題とされるのは、着陸料や施設利用料が高額であることから、ハブ空港の地位を他の近隣諸国の大規模空港に奪われるのではないかという懸念である。しかしながら、国民の経済厚生を検討する場合、単純な料金の比較は必ずしも有効ではない。一般財源の投入は外国からの利用者のただ乗り(Free Ride)を招くことが予想されるからである。そこで本年度は、近隣の2国間のハブ空港をめぐる寡占的競争を、政府-消費者(家計)の2段階ゲームを、空港の与える外部経済効果を考慮に入れた形で分析した。その結果は以下のようである。1.単純に空港の使用料が外国に比べて高いことは必ずしも不合理ではない。特に、競合する他国が経済的に合理的でない理由でいたずらに低価格で空港サービスを供給する場合には、その数倍の価格で供給することにより、経済厚生的には有利な立場を得ることができる。この場合、名目の国民所得に惑わされてはいけない。2.閉鎖経済で成立する外部性に対する一般的定理であるピグー補助金は、国際公共財であるハブ空港の場合は成立しない。したがって、「国際ハブ空港の外部経済効果分については補助しても構わない。」といった一般財源投入理由は、論理的に破綻している。3.しかし、グローバリゼーションと呼ばれるような潮流の中で、外国の人々が寄港することによる自国への経済効果がより重要度を増したり、自国民がハブ空港の国籍にこだわらなくなりつつある状況では、(自国民への所得課税率は上昇したとしても)空港の使用料を下げて、利用者を招き入れることが戦略的には正当化され得る。
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