労働の供給制約が少子化や高齢化によって将来的に強まるとすれば、未活用の人的資源を労働予備軍として考えていくことがわが国の経済にとっての重要課題の一つになる。その大きな労働予備軍の一つが女性の潜在労働力である。 女性の潜在労働力は就業者(または有業者)の中の追加就業希望者(第一のタイプ)と非労働力人口(または無業者)の中の就業希望者(第二のタイプ)に存在する。今回行った多摩ニュータウンの既婚女性の就業実態調査では、調査対象者(829人)の約4人に1人がこの潜在労働力の範疇に入る。 未活用の人的資源の多くは第二のタイプにみられるが、女性の就業希望者には実際に仕事があってもすぐ就けるかどうかわからない者もいる。労働力資源の活用可能性には「即就業可能」かどうかが問題になる。そこで、“仕事への距離"を考えて、非労働力人口の中の就業希望者(第一段階)のうち「いま、仕事があればその仕事にすぐ就くことが出来る」者(第二段階)、さらに第二段階の者のうち「過去半年間に求職活動あり」の者(第三段階)に分けて、それぞれが非労働力人口に占める割合をみると、第一段階の者は26%となるが、仕事への距離がより短いと思われる第二段階の者は3%、第三段階の者は1%未満と少ない。 就業意欲をもちながら“仕事への距離"が長くなる原因は、税制や賃金体系、雇用環境、家庭環境、にある。“仕事への距離"を短くするためには、社会、企業、家庭のそれぞれの場での女性労働力の有効活用に向けた取り組みが必要となる。社会の場では、税や社会保障の制度の個人化や柔軟化を図ること、企業の場では、増加しつつある非典型雇用やコンティンジェント労働を今日の‘正規“の就業形態として正当に認識し、労働時間に応じた適正な処遇と身分の保障を行う努力を払っていくこと、家庭の場では、育児や介護を男女の別なく行うことが大事である。ジェンダー・フリーの社会に向けて、男社会から男女共生社会への精神の脱皮が必要になろう。
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