クラークとギディングズとの往復書簡の解読とそのワープロ処理を第1年度にほぼ終了し、第2年度はその分析を行った。 これらの往復書簡は、クラークからギディングズ宛の書簡が265通(約850頁)、ギディングズからクラーク宛書簡(コピー)が5通と長文のメモ1点からなっている。クラークの書簡の約98%はクラーク経済学の重要な展開期である1886年から1895年にわたる10年間に集中している。したがってこれらの書簡は、限界生産力的分配論を中核とした、アメリカの限界革命期におけるクラーク経済学の展開過程に、これまで以上に詳細で具体的な光を当てる経済学史的資料価値をもっている。 具体的には、これらの書簡は、レント論の展開過程、とくに資本の限界生産力理論の形成・展開過程、ベ-ム-バヴェルクその他のオーストリー学派経済学者との資本・利子論争等からみて極めて貴重な資料といえる。 とりわけこれらの書簡の分析により、ギディングズがクラーク経済学の展開過程において果した役割は、クラークとの共著の著者という範囲をはるかに越えたものであることがわかる。ギディングズはクラークの限界生産力理論を中心とする経済理論のほぼ全体について重要な討論者としての役割を果たしたにとどまらず、動学への展開での影響、初期のキリスト教社会主義から「進歩的自由主義」へのイデオロギー的転換に対するギディングズの影響は新しい知見として重要といえる。研究成果は、とりあえず『経済論集』(関西大学)47-5、1997年、1-20頁に発表された。書簡全体は解説論文付きでProf.Samuelsの編集によりアメリカのJAI Press Inc.から出版される予定である。これにより国内外の研究者にこの資料が完全に公開されることになる。
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