時系列線形モデルに対して、非線形構造が一般に帰無仮説においては不在であり、識別不能となる。このような統計的検定の状況では、対立仮説に現れる母数が帰無仮説において不在であるため、尤度比、Lagrange、 Wald等の標準的な検定理論は適用できず、独自の検定問題が発生する。本研究の目的は、経済時系列データにおける非線形構造の識別のための統計的検定法の開発にある。このような検定状況に適合した検定統計量の構成と、その帰無仮説における確率値を求めるコンピュタアルゴリズムの作成を、本年度の研究では行った。 具体的には、 1.本年度の研究では、特にランバートの不均衡労働市場モデルを取り上げた。ランバートモデルは静学的モデルであるが、これを動学化し、非線形動学モデルとして定式化した。 2.最尤推定のため、新たに微分によらない非線形最適化プログラムをフォルトランによって作成した。これは既存プログラムでは、反復計算上途中のコントロールを可能にするものである。 3.ショート・サイド決定を帰無仮説とした、検定法をシミュレーション検定として開発し、労働力調査等のデータを用いたランバートモデルの有意性検定に適用した。
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