A.昨年度に引き続き、今年度も、広島県下で発見、マイクロフィルム複写の形で入手した個票類の入力及び分析を行った。この作業は現在も継続中である。 B.また、本研究の当初の計画には含まれていなかった資料であるが、福島権行政文書中に、第一回国勢調査実施時の、県下の国勢調査員全員に関する名簿(約6000人強の分)を発見した。この資料には、国勢調査員ひとりひとりについて、1.氏名、2.生年月日、3.正副調査員の別、4.現職、5.元職、6.担当調査区、7.現住所が記載されている。このような資料は、全国各道府県で作成されたと考えられるが、実際に発見されたのは、今日までのところ、これが唯一の例である。この資料を解析することによって、日本の第一回国勢調査が、実際の調査現場では、どのような人々によって担われていたかを明らかにすることが可能となる。 このことは、以下の二点の意義を持つ。第一に、国勢調査が実査にはどのような人々によって実施されているかを知ることは、その結果として得られたデータにどのような特性ないし偏倚があるかについて明らかにすることにつながる。第二に、国勢調査のように全国民を動員する必要があったときに、国が把握する必要があった人々がいったいどのような属性を有する人々であったかについて、数量的に明らかにすることができる。これは、歴史学の分野で「地方名望家」とされている人々の属性について、これまでのようにミクロ的ないし定性的な分析にとどまらず、マクロ的ないし定量的な観察を可能にする点で、画期的な資料である。 本研究では、この名簿と、同時に発見した、同時期の同県下の名望家の名簿(約1000人強)、複数の村に関する戸数割税務資料(現いわき市域の数ヶ村)とのマッチングを通じてこの資料の解析をすべく、目下入力等の作業中である。
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