1.前年度は旧製鉄所の室蘭とその下請企業の調査を行ってきたが、本年度は新鋭の君津製鉄所・大分製鉄所及び君津製鉄所の下請企業を対象に調査と資料の収集を行った。 2.新鋭の君津製鉄所などでは最新鋭のAI(人工知能)を導入してリストラクチャリングを展開している。AIの導入は要員削減の重要な手段であるが、労働の簡単化-たとえば、旧来の制御労働、制御指示、経験的熟練を低減化-も推し進めた。しかし同時に、マニュアル化されない新たな知的熟練を生み出している。この新たな知的熟練は旧来の熟練とは異なるコンピュータ段階的なものであり、その習得には新たな知的熟練とそのベースとなる機械・コンピュータのメカニズムの理解、データベースの中身の理解、あるいはコンピュータ・情報処理に関する総合的理解が必要である。 3.1997年に導入された新人事制度は、系列区分の廃止、資格制度の改定、賃金制度の改定など幅広い内容のものであった。このうち賃金制度の改定は、従来の職務給とそれをベースにする職能給を廃止して、新たに業績給と業務給からなる能力給に完全に編成替えしたことである。その結果、職務や仕事に制約されない能力給部分が84%に達した。このような能力給部分の増大は、個人の業績評価・能力評価を重視することによって、資金の個別化を推し進めることになった。 4.君津製鉄所のリストラは本工の削減だけでなく、社外企業のリストラをも強要したが、その特徴はつぎのとおりである。(1)業務の下請移管なしの出向者(高齢者)の受け入れが増大したこと、(2)事務部門のグループ化・事務員の多能工化によって、事務部門のスリム化をはかったこと、(3)2次下請の活用によって社外企業のスリム化をはかったこと、(4)新しい人事制度を導入することによって、能力主義を進めたこと、等々である。
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