ドイツの企業と銀行についてのこれまでの研究では、歴史上のみならず、現在においてもドイツの金融資本的結びつきを強調する議論を多くの研究者がしている一方、戦後ドイツの自己金融の側面を強調しながら、ドイツの企業・銀行がたいして強くはなく、イギリスと同じような「マーケット」関係に還元できることを主張する議論も出てきていることがわかった.こうした議論を検証するために、現在、ドイツ大企業500社についての統計調査を対象に、(1)企業の運営方針を決定する重要な役割を持つ監査役会がどのようなメンバーから構成されているか、特に労働組合代表者と銀行の代表者の発言権はどうか (2)大株主の構成、特に株式の持ち合いや銀行による支配はどのようになっているか、 (3)「ハウス・バンク」システムはどれだけの割合の企業についてあてはまるか、等の観点から分析を進めている. ドイツの場合、株式会社になると、共同決定をめぐる法的規制の下に置かれ、様々な社会的・経営的制約をこうむることを理由に、あえて巨大企業の場合でも有限会社形態を取ってケースも多く存在している.また、失業率増大や産業空洞化など、ここ数年のドイツ経済の構造変化に伴う動揺を収束するために、改めて労使の協調行動が模索され、ストライキが打ち抜かれる一方で、コール首相と労働組合代表が話し合うことにも表れているように、ドイツにおける「労働」側の「共同決定」力は、低下しつつあるとは言われながらも、日本では考えられないほどに大きいと言える.これが実際に企業への影響力をどの程度持っているのかについても次年度以降調査していきたい.
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