これまで日本における企業社会の特徴として、銀行を中心とした企業系列の存在、長期的信用関係にのっとったメイン・バンク制度、持ち合いを通じた安定的株主システムがあげられてきた。これによって経営者の地位が日本では強くなり、一方では戦後の経済発展の根拠とされ、他方では株主軽視として批判されてきた。これまでの国際比較では英米との比較が多かったため、日本がある意味で非常に独自なシステムを発展させてきたととらわれてきた。しかし、実はドイツにおいては、日本とは異なる形ではあるものの、日本を更に押し進めたとも言えるべき非常に強い企業社会の安定的システムが存在してきたことがわかってきた。 日本において株の持ち合いは、主に系列企業内部で行われてきたが、ドイツにおいてははっきりとした系列という形はないものの、銀行・生命保険会社を中心とする緩やかな系列関係による株の持ち合いが非常に大きな割合を占めてくることで、ハウス・バンク制度及び株主の安定化を長期的に実現していた。更にこうした銀行や生保は、驚くべきことに自らの業界内部で株の相互持ち合いをおこなっていた。それは業界の内部で環状につらなっておりーこれは独占委員会報告書によって「環状=リング持ち合い」と名付けられているー、企業・産業システム全体の安定性を作り出す元締のような位置をつくりだしてきた。これはほとんどがカルテルにさえ近いものであり、これによってドイツ産業全体の長期的安定性が担保されてきたと言うことができるのである。 これに更にドイツ企業の最高意思決定機関である監査役会に労働者・労働組合代表者が参加する共同決定制度を通じることによって、ドイツは銀行・株主側からも、また働く側からも、企業を安定させる制度化を果たすことができたと考える。
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