社会主義体制崩壊後、社会的所有の私有化をめぐって生起する階級形成斗争と並んで、特にボスニア・ヘルツェゴヴィナの農村地域においては、1920年代と1930年代前半に実施された農地改革が今日の戦争に大きく影響する農地改革においてムスリム人地主は、農地の80%の所有者から突如として無所有者、乞食の位置に転落し、セルビア人やクロアチア人は、農奴や小作人から自営独立農家になる。社会主義ユ-ゴスラヴィアは、農業集団化を断行しなかったが故に、戦間期に成立した土地所有関係は基本的に保存されて来た。社会主義崩壊後、ムスリム人達は、この土地所有関係の不当性と見直しを要求し始めたのである。これが、農村のセルビア人やクロアチア人農民にショックとなった。
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