本年度は、2年継続の研究計画の2年目として、まず、日本多国籍企業について調査分析を深め、次に、これと1年目におこなったアメリカ多国籍企業の研究成果と合わせ、比較総合的に分析を進めた。具体的には、1)日本多国籍企業に関して、日本多国籍企業研究グループにより既に収集・整理・分析された膨大なデータの中から本研究に適切なものを再整理した。2)本年度に企画された別の海外調査や国際会議の機会を利用して、日本および欧米企業の海外子会社に関するデータを補充した。3)以上のデータを比較的に処理・分析し、その歴史的・理論的・政策的合意を総合的に考察した。その成果の一部は、東京大学社会科学研究所編「20世紀システム」シリーズに収録される論文などにも組み込まれる。その要点は以下のとおり。1)アメリカ型技術は世界的に普遍性をもつものとして普及したのに対して、日本型は特殊性が目立ち異なる環境には馴染みにくい面がある。2)しかしその実態をみると、アメリカ型は先進国中心で予想以上に現地適応型だが、日本型は、知識、技術レベル、生活習慣などの異なる世界各地域にこまごまと入り込み、しかも日本方式の持ち込みに熱心である。3)アメリカ型の普遍性は、新製品の量産技術としての適用可能性だが、これは一定の工業技術水準をもつ先進地域に限られ、少数の責任者を現地に派遣すれば足りる。他方日本型は、製品・製造技術ともに、成熟製品を市場ニーズに対応して柔軟に作り分けるから、様々な地域への適用可能性をもっているが、ただ参画型管理を必要し、大勢の日本人を派遣する。4)アメリカ型は、20世紀を特徴づける技術だが、その実質的な浸透度合いはそれほど広く深くはないのに対して、日本型は、国際的な広がりに欠けるようにみえながら、システムの機能は日本人によるサポートを前提に柔軟な適応能力を発揮し、より広範な浸透を果たしている。
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