ロシアにおける市場経済主体の形成の制度的・経済的側面(担当 岡田進)にかかわっては、今年度は、主として資料収集と本課題の前提となる体制転換過程そのものの研究を行った。まず新民法典によって、多様な所有・経営形態を整理し、経済主体を確定した。中心となる私的企業の形成については、<バウチャー>民営化段階の総括を行うとともに、金融=産業グループの形成や小規模私的企業の発展と国家的支援政策の現状についても、一定の知見を得た(このうち農民経営については論文にとりまとめ発表した)。また銀行制度や証券市場の形成とそのロシア的特質についても考察した。次年度は、上記の一般的認識を前提として、ロシアのコ-ポレート・ガバナンスの特質を内外の実証研究を援用して明らかにし、企業における従業員・経営者・外部株主・金融機関・官僚等の相互関係を、それぞれの行動様式や意識をふくめて、立体的に把握することを意図している。 体制転換後の人材養成システムの研究(担当 関啓子)については、経済教育にかかわる教科書を集め、また、新教育法とその一部改定という現実をふまえて、教育にかかわる法的文書を翻訳するなどの、資料収集と教育改革の全体構造の把握とに努めた。ロシアとポーランドで市場経済への転換の現状を調査し、企業家にインタビューを行った。シドニーでの国際比較教育学会に出席し、報告するとともに、体制転換に伴う教育改革をめぐる議論に参加し、東欧圏の実情を学んだ。次年度は、企業内教育・再教育の現状を調査し、特に女性の企業活動への参加の実体を検討する。
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