本研究は、近年、国内外でますます大きな問題となっている各種の環境関連諸費用を「環境コスト」(Environmental Costs)という新しい経済学的概念を定立することによって捉え、それらの具体的な実態分析を踏まえつつ、その負担ルールおよび負担制度に関する理論的ならびに政策的な研究を進めようとするものである。3か年の研究計画における第1年度にあたる平成8年度では、近年、アメリカ、欧州、日本において、とくに廃棄物処理問題(とくに産業廃棄物処理問題)や土壌汚染(地質汚染)問題と関連して顕在化している各種の環境関連諸費用の実態を踏まえつつ、まず、それらの諸費用の理論的分類のあり方について検討を加え、独自な「環境コスト」論を積極的に展開していくための基本的な理論的フレームに関する試論的な考察を進めた。そこでは、各種の「環境被害」と「環境コスト」との実際的な連関を踏まえることによって、「環境被害補償費用」「環境被害修復費用」「環境被害緩和費用」「環境被害予防費用」「環境被害取引費用」「環境被害行政費用」という6つの費用部類への分類論を提起し、それらの費用負担原理をめぐる基本的な論点整理を行なった。なお、この序説部分に関するまとめについては、とりあえず、「<環境コスト>と負担問題」と題する論文として、また、同様の課題に取り組んでいる関連分野の研究者たちとの学際的討論(「 "環境費用" の負担問題を考える」)として、季刊専門誌『環境と公害』(岩波書店)第26巻第4号(1997年4月15日刊)に公表予定となっている。今後、第2年度に当たるる平成9年以降の研究では、さらに、これらの環境関連諸費用に関する既存の負担制度について、国際比較を含めた実態的な検討を踏まえつつ、新たな負担制度のあり方に関する具体的な政策研究へと進む予定である。
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