本研究は、近年、国内外においてますます重要な問題となっている各種の環境関連諸費用を「環境コスト」(Environmental Costs)という新しい経済学的な概念を定立することによって捉え、それらの具体的な実態分析を踏まえつつ、その負担ルールおよび負担制度に関する理論的ならびに政策的な研究を進めようとするものである。3カ年の研究計画における第1年度に当たる平成8年度では、近年、アメリカ、欧州、日本のいずれにおいても、とくに廃棄物処理問題(とくに産業廃棄物処理問題)や土壌汚染(地質汚染)問題と関連して顕在化している各種の環境関連諸費用の実態を踏まえつつ、まず、それらの諸費用の理論的分類のあり方について検討を加え、独自な「環境コスト」論を積極的に展開していくための基本的な理論的フレームに関する試論的な考察を進めた。そこでは、各種の「環境被害」と「環境コスト」との実際的な連関を踏まえることによって、「環境被害補償費用」「環境被害修復費用」「環境被害緩和費用」「環境被害予防費用」「環境被害取引費用」「環境被害行政費用」という6つの費用部類への分類論を提起し、それらの費用負担原理をめぐる基本的な論点整理を行った。第2年度に当たる平成9年度では、以上の理論的フレームを念頭に置きつつ、従来までの各種の環境関連諸費用に関する実際の負担制度をめぐる具体的な現実についての調査を進めた。その際、この間にアメリカや欧州等で新たに登場してきている費用負ルールとして、米国のスーパーファンド法、ドイツの廃棄物処理法や環境経済法などに具体化されている制度の実情についても比較検討を進めた。今後は、1990年代後半の日本においても、具体的な係争となってきている包装容器リサイクル法や家電リサイクル法(案)などにみる費用負担問題の実情を含め、今後のあるべき費用負担制度に関する政策研究へと進む予定である。
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