本研究は、近年、国内外においてますます重要な問題となっている各種の環境関連諸費用を「環境コスト」(Environmental Costs)という新しい経済学的な概念を定立することによって捉え、それらの具体的な実態分析を踏まえつつ、その負担ルールや負担制度に関する理論的ならびに政策的な研究を進めようとするものである。 平成8年度から3カ年の研究計画における第3年度目に当たる平成10年度では、1990年代後半以降の日本においても具体的な係争となってきている廃棄物関係諸経費の負担をめぐる諸問題(具体的には包装容器リサイクル法や家電リサイクル法等にみる費用負担問題等)の検討を含めて、今後のあるべき費用負担のルールと制度に関する政策研究を進めた。 また、この間にたまたま日本海沖で発生したロシアのタンカー船・ナホトカ号の座礁事件(平成9年1月2日未明発生)に伴う深刻な油濁被害の補償処理をめぐる問題が浮上してきたという事態を受けて、この種の環境関連費用の負担問題をめぐる現実についてのケース・スタディも行った。そこでは、すでに約20年の歴史をもつ国際油濁補償基金制度の成立や経緯や背景、そこで採用されている費用負担のルールやシステムの意義や問題点についても具体的な考察を行った。そして、このケース・スタディから、今後における費用負担制度の一つのあり方として「環境基金」という制度がもつ独自な意義と役割について幾つかの示唆を得ることができた。 今後、これまでの3カ年度にわたる研究の成果を何らかの形でとりまとめていく作業を行う予定である。
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