本研究では、女子の大学・短大進学行動を規定する要因は何かという基本的な問題、およびそれに関係する問題を考察した。まず女子の学歴別の年齢・賃金データや年齢・労働力率データを大学・短大教育費用のデータとともに用いて、女子の大学・短大教育の内部収益率を計測した。わが国の学歴別労働力データは少ないので、いくつかの代替的なケースを想定した計測も行なった。その結果、女子の大学・短大教育の内部収益率はかなり高く、男子のものよりも概して高いという結果などが得られた。次いで女子の大学進学率の時系列分析を行い、学校納付金、個人可処分所得、完全失業率、女子労働力率、第3次産業の就業者数割合などの効果を分析し、これらが女子の大学進学行動と有意に関係していることを明らかにした。特に、個人可処分所得や20歳代後半の女子の労働力率の上昇が、近年の女子の大学進学率の急上昇をもたらしていることを示した。さらに、離散選択モデルを使って、1990年の女子の大学・短大進学率の決定要因を研究した。この研究は三つの部分に分けてなされた。第一の部分では、離散選択モデルの理論的枠組み、および推定方法の選択を実証研究者向きに解説し、最小カイ二乗法を使ったロジットモデル分析を推奨している。第二の部分では、二項ロジットモデルを最小カイ二乗法で推定し、女子の大学・短大進学決定要因を男子の場合と対比させながら分析している。主な結論は、男女とも親の社会経済的ステ-タスが低いほど子供の進学需要が高まるというものである。第三の部分では、多項ロジットモデルを最小カイ二乗法で推定し、女子の大学進学、短大進学、さらに高卒後就職の三つの選択肢における意思決定パターンを分析している。二項モデルと比較すると、親の社会経済的ステ-タスについての推定量は総じて有意性を増している。
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