旧ユ-ゴスラヴィアの民営化の実状についてはかなり明らかになった。スロヴェニアでは分権的、漸進的アプローチとヴァウチャー方式を伴う無償分配というアプローチとの対立があったものの、1992年からその折衷的なアプローチで民営化が進められた。クロアチアでは社会有企業の約50%が民営化された。新ユ-ゴスラヴィア(セルビアとモンテネグロで構成)は民族紛争と国連制裁によって経済的打撃を受けたことにより、民営化の取り組みは遅れている。新ユ-ゴは外国の資本を大いに必要としているが、IMFと世界銀行へのメンバーシップを回復できていないので、外国の銀行からの融資も得られない。マケドニアは1989年にすでに民営化を開始したとはいえ、新ユ-ゴへの国連制裁の間接的影響ならびに隣国ギリシャとの関係断絶のため経済的苦境から脱出することが重要な課題となっており、民営化は十分進んでいない。このように、旧ユ-ゴの北部と南部では対照的な動きを示している。 上記の研究成果については、1997年7月3日にベオグラードで開催された国際フォーラム「中東欧における体制転換」で口頭報告し、学会誌『Japanese Slavic and East European Studies』第18巻で発表したほか、報告書「中東欧と南東欧における市場経済移行-旧ユ-ゴスラヴィアを中心に-」でも発表した。 東欧諸国の市場経済移行に関する多くの資料を収集することができた。歴史的に形成された初期条件の違いにより、市場経済移行に際して、中東欧と南東欧が対照的な動きを示しているがある程度確認できた。
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