第1に、各国、とくに旧ユ-ゴスラヴィアの民営化の実状について研究した。スロヴェニアでは分権的、漸進的アプローチとヴァウチャー方式を伴う無償分配というアプローチとの対立があったものの、1992年からその折衷的なアプローチで民営化が進められた。クロアチアでは社会有企業の約50%が民営化された。新ユ-ゴスラヴィア(セルビアとモンテネグロで構成)は民族紛争と国連制裁によって経済的打撃を受けたことにより、民営化の取り組みは遅れている。新ユ-ゴは外国の資本を大いに必要としているが、IMFと世界銀行へのメンバーシップを回復できていないので、外国の銀行からの融資も得られない。マケドニアは1989年にすでに民営化を開始したとはいえ、新ユ-ゴへの国連制裁の間接的影響ならびに隣国ギリシャとの関係断絶のため経済的苦境から脱出することが重要な課題となっており、民営化は十分進んでいない。このように、旧ユ-ゴの北部と南部では対照的な動きを示している。 第2に、金融制度の改革の実態についてもある程度明らかになった。東欧諸国は1980年代末から90年代初めにかけて相次いでモノ・バンキング制度から2層制の銀行制度(中央銀行と商業・投資銀行の分離)への移行を行った。ハンガリー、ポーランド、チェコなどの東中欧諸国は戦前からの伝統および1960年代からの改革の努力がものをいい、西側諸国と同様の金融制度が速やかに定着しつつあるが、ブルガリアやル-マニアなど南東欧諸国ではこの改革は容易ではない。
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