(1)1997年9月に開催された中国共産党第15回大会は、国有企業の株式制化、国有資産の流動化などの所有制構造改革は、私有化をもたらしたり、社会主義の性質を変えるものではないと論断し、14期3中全会(93年11月)およびそれ以降推進されてきた現代企業制度の確立と国有企業の戦略的改組(大企業への国有資産の集中、小企業の自由化)のいっそうの促進を改めて強調した。しかし、市場経済への移行へ向けた改革が本格化した14期3中全会以降、国有企業の経営はむしろ悪化し、失業者、一時帰休者も増大、それにともなって労働争議も頻発するに至っている。 15回大会は、こうした国有企業の経営悪化の原因を、所有制構造改革が十分進展しなかった結果ととらえ、その主要な理論的障害が私有化批判にあったととらうるものであった。しかし、この認識は一面的であり、経営権による所有権の侵害、あるいはインサイダー・コントロール(国有企業内部の経営陣および労働者・職員の国有資産の食いつぶし問題)が所有制構造改革の進展によって誘発され、激化したこと、それが経営悪化の原因の少なくとも重要な要因の一つであったことを見逃すべきではない。 (2)経営陣による所有権の侵害を口実に、企業内党組織の経営への関与が強調されるに至っている。しかし企業内党組織は、インサイダーであり、それが、所有主体(国家)に代わって経営を監督する役割を十分果たすとは考えにくい。むしろ企業内党組織は経営陣と一体となっていっそう所有権を侵害する可能性がある。 (3)今後の改革では、所有制構造改革の進展にともなう失業問題の処理とともに、コ-ポレートガバナンスの確立を重視する必要があろう。
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