研究課題/領域番号 |
08630054
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
佐々波 楊子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (30051288)
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研究分担者 |
河井 啓希 慶應義塾大学, 経済学部, 専任講師 (00276396)
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (90265918)
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キーワード | 内外価格差 / 市場アクセス / パススルー率 / 購売力平価 |
研究概要 |
為替変動は企業がその変化分をどの程度、国内及び輸出価格に転嫁するか(パススルー率)によって、内外価格差にさまざまな影響を与える。日本を例にとれば、円高にもかかわらず、国内の輸入財価格を引き下げなければ、国内価格は海外(国際価格)の同一商品価格に対して割高となり、円高前の購買力平価に比べると為替レートからの乖離が大きくなる。また輸出価格を引き上げなければ内外価格差別が生じる。 内外価格差のとらえ方には、日本と外国の購買力平価での生計費差と為替レートをくらべる方法と、国際価格(例えば輸入財価格)と国内の同一財価格を直接くらべる方法がある。後者の方法をもちいた研究としては佐々波・浦田・河井著、木村解説「内外価格差の経済学」(1996年刊、東洋経済新報社)がある。また為替レート変化がこのような内外価格差にパススルー率を通じてどのような影響を与えるかについては、木村・河井・田中著「内外価格差と貿易障壁」(1996年6月号 三田学会雑誌)がある。 本年度はこの二つの研究成果をふまえて、1990年から1995年及び1990年から1995年の円高期に日本の品目別輸出入パススルーのちがいが国内価格及び輸出価格にどのような影響を与えたかを分析した。その結果、輸入パススルーについては政府規制や民間取引慣行が輸入財の市場アクセスを阻げているような商品-例えば食料・飲料、化粧品、医薬品、衣料・履物-についてはパススルー率が低く、内外価格差は拡大する。輸出パススルーについては企業活動がグローバル化し、海外生産比率の高い電機・電子などの品目ではパススルー率が高く、価格差別が行われていないことが明らかになった。これらはおおむね「物価レポート'96」(経済企画庁)の生計費ベースでの購買力平価と為替レートとの乖離の分析と整合的である。
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