本研究の目的は、ドイツを中心に、EUにおける単一通貨ユーロ導入準備の現状と問題点を、雑誌・新聞等の様々なメディアを通じて調査し、ユーロの導入がEU経済やEU統合に与える影響を探ることにあった。私の調査によれば、EU企業や政府におけるユーロ導入準備は一般に遅れている反面、金融機関や中央銀行におけるユーロ導入準備は進んでおり、ユーロの導入は欧州における金融機関再編の決定的な契機になると見られている。現在のところ、ユーロの導入は1999年1月より開始されることは間違いないと見られているが、ユーロの導入に伴ってコンピュータ・システムや財務・会計処理の変更、取引・契約の見直しなど数多くの課題が残されている。また、ユーロの導入によってEUの単一市場はまた一歩完成へと近づくが、税制や会社法の調和といった課題も次なる課題も浮上してきている。さらに、EUには中東欧への拡大や政治統合といった課題も控えている。 以上の研究成果をふまえて、今後はユーロの導入がEU経済の実物面、金融面に与える影響をより詳しく分析してゆきたい。前者に関しては、ユーロの導入が、今日欧州経済の抱えるもっとも深刻な課題である失業問題の解決にとって最大の鍵と見られる労働市場の活性化にどのような影響を与えるかを調査したい。他方、後者に関しては、ユーロの導入がEUの金融システム、並びにグローバルな金融システムに与える影響を探って行きたい。
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