この研究はホワイトカラー労働の生産性問題を、ブルーカラー労働の分析にあたって有効であった部門業績管理の研究を適用して、その特性と課題を発見しようとしたものである。研究によって得られた主な知見は概要次の通りである。 1.ホワイトカラー労働の変動は、ブルーカラー労働と同様に、外部環境の変化→経営戦略の再構築→部門業績管理の再編→人事考課の再編→資金管理の改正という管理体系の変動という経路をたどる。バブル経済崩壊後のホワイトカラー労働の再編論議の主潮流は、この経路のうちもっぱら人事考課の再編と賃金管理の改定という次元のみに着目しているために、生産性との関係を積極的に取り扱えない。 2.製造業であれ、サービス業であれ、営業部門がそうした管理体系の変動を最も敏感に反映しうる。売上高管理から収益管理への部門業績管理指標の移行、人事考課における数値指標の比重増大がそれである。重要な点はそれに応じて、管理間接部門の管理が、営業部門での管理との比較において、組織内合意を促す内部調整を必要としていることである。特定業務の外部化、要員管理の厳格化、もしくは報酬における従来の規範を超えた格差設定(年俸制)は代表的な調整内容である。 3.この研究は、日本の経営の現況の社会科学的記述の新たな方法を示している。ケーススタディをさらに積み重ねた場合、人事管理論と経営学とがより有機的に組み立てられる可能性が強い。この研究過程で新たに考慮すべき課題として浮かび上がってきた論点は、ノルマ設定をめぐる労使関係の詳細を論理化することである。国策である「ゆとりある勤労者生活」を科学する端緒にようやくたどりついたということができる。
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