東欧企業の民営化の発展段階と類型化という研究の第一の目的にそって、96年度は、ポーランドとチェコにおいて以下の企業、工場、組合において企業調査を行なった。ポーランドでは、シチェチンおよびグダンスクの造船所、ポズナンのVW工場、ワルシャワのGM-FSO、大宇-FSOの自動車工場、チェコでは、チェコ電力公社、チェコ・テレコム、VW-シュコダの合弁の自動車工場、チェコ自動車工業会、およびチェコの労働組合(民営化について労働側の評価を聞くため)を訪問し調査を行なった。さらに、チェコおよびポーランドのジェトロを訪問し、日本の企業代表者の意見を聞いてきた。民営化の輪郭はおおよそ把握できた。資料を整理して執筆の予定。 研究の第二の目的については、西欧依存型の東欧経済システム転換では、技術移転の問題を重視して調べたが、この点では、韓国・大宇自動車の技術移転なき合弁と技術移転を含んだ中小企業の育成というVWとの大きな違いを見いだした。戦略の相違としてさらに研究が必要。 研究の第三の目的、すなわち物価体系と賃金体系の西欧と東欧の相違が東西経済関係にどんな結果を今後もたらそうとしているかについては、現在のところ事実の把握がまだ不充分である。つまり、同一種類の同一品質の商品の価格が、東欧と西欧でどのように設定されるかは、調査および新聞・経済誌からの資料分析ではまだ明確になっていない。また、農工間の東欧と西欧の相互関係については、卵・乳製品・果実加工品など一定の商品については明確になったものの、小麦などの主要農産物について研究は進んでいない。 さらに、新聞・雑誌(日本および欧米)に基づいた資料の作成については、資料目録の作成を現在進めており、この点は相当に進んだと評価している。
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