本研究の目的の1つは、世紀転換期のアメリカのM&Aの波の高まりによって生み出された現代的企業システムとそれ以前の近代的企業システムの相違を明確にすることであったが、そのために本年度は、第一に、M&Aによって出現した現代企業におけるトップマネージメント層がどのようにして形成され、どのように変化していったのかを、40社の30年間にわたる取締役および社長等の最高経営者の出自、経歴を検討することによって明らかにした。そこでえられた知見は、旧所有者の衰退と専門経営者の台頭であった。ついで、ミドルマネジメントをふくむいわゆるホワイトカラー層がどのように形成されたかを明らかにするために、センサスからデータを抽出したが、統計的処理をほどこして結論を得るにはいたっていない。第三に、いわゆるブルーカラー労働者が半熟連労働者(オペレーター)を中心に階層組織に編成されていく過程を明らかにするために、U. S.スティール社の事例の分析を開始した。 本研究のもう一つの目的は、1980年代以降現在も進展中のM&Aの波の高まりが現代企業とは異なったシステムをもつ新しいタイプの企業を生み出すかもしれないという想定(仮説)を検証することであったが、この目的を達成するために本年度は80年代に起こったM&Aの個別ケースを網羅的に収集し、大量観察のための準備を行うにとどまった。
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