本研究の目的の1つは、世紀転換期のアメリカのM&Aの波の高まりによって生み出された現代的企業システムとそれ以前の近代的企業システムの相違を明確にすることであったが、そのために本年度は、前年度に引き継ぎ、ミドルマネジメントをふくむいわゆるホワイトカラー層がどのように形成されたかを明らかにするために、センサスからデータを抽出し、さらに、伝記的なデータの蓄積を重ね、統計的処理と記述的な分析がなされた。その結果、近代企業には見られなかった、ホワイトカラー層一般の形成、とりわけミドルマネジメントの形成を巨大合同企業において析出することができた。 本研究のもう一つの目的は、1980年代以降現在も進展中のM&Aの波の高まりが現代企業とは異なったシステムをもつ新しいタイプの企業を生み出すかもしれないという想定(仮説)を検証することであったが、この目的を達成するため前年度に引き継ぎ80年代と90年代にアメリカで起こったM&Aの個別ケースを網羅的に収集して大量観察を行うと同時に、産業別の分析を試みた。その結果、情報化の進展と世界市場の成立という新たな条件の中で、多くの産業で新しいタイプの世界企業の出現が観察された。
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