日本の市場規制に関する史的研究-電力・石油・自動車・コンピュータ・流通の事例-

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08630071
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 橘川 武郎 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20161507)
• キーワード: 日本市場 / 規制 / 中間組織 / 企業集団 / 流通構造 / 取引慣行 / 生活様式 / 企業家精神

研究概要

1.戦後の日本では、市場と組織(企業)の中間領域である中間組織が、広汎に発展したことを確認した。そして、代表的な中間組織である企業集団を取り上げ、その基本的機能は株式相互持合いによる株式安定化にあり、その付加的な機能は取引コストの削減や情報の交換、リスク・シェアリングなどにあることを、明らかにした。
2.戦後の日本における生活様式の変化(例えば、衣や食の洋風化)が、流通のあり方にどのようなインパクトを与えたかを、歴史的にあとづけた。その結果、日米構造協議等で市場の開放性を阻害するものとして問題視された日本的取引慣行(例えば、委託仕入、派遣店員や複雑で曖昧なリベートなど)には、それなりの経済合理性が内包されていることが明らかになった。
3.戦後の日本において、石油精製業・石油化学工業・電力業などは、政府による規制が強かった点で代表格と言える産業である。しかし、一連のケース・スタディを通じて、これらの産業においても、旺盛な企業家精神の発露や、活発な民間企業の事業展開がみられたことが、明らかになった。石油精製業における出光佐三(出光興産)の活動、電力業における松永安左エ門とその後継者達(木川田一隆・芦原義重・横山通夫ら)の活動、石油化学工業におけるエチレン年産30万トン基準(1967年)を乗り越えた一連の共同・輪番投資などは、その典型だと言える。
4.今後は、流通業・電力業・石油精製業・石油化学工業だけでなく、自動車産業・コンピュータ産業についても、ケース・スタディを行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] 橘川 武郎: "戦後日本の企業集団と融資系列" 社会科学研究. 48巻1号. 93-133 (1996)
• [文献書誌] 橘川 武郎: "戦後日本の企業集団をめぐる諸論点" 社会科学研究. 48巻3号. 1-41 (1996)
• [文献書誌] 橘川 武郎: "戦後日本の生活様式の変化と流通へのインパクト" 社会科学研究. 48巻5号. 111-151 (1997)
• [文献書誌] 橘川 武郎: "戦後日本経営史研究の新視角-1960年代前半の画期性-" 経営史学. 32巻2号. 27-40 (1997)
• [文献書誌] 橘川 武郎: "The Business of History:Analyzing the Development of Japan's Postwar Distribution System" Social Science Japan. No.11. 3-6 (1997)
• [文献書誌] 橘川 武郎: "3人のタイプの異なる石油業経営者" 社会科学研究. 49巻4号. 73-89 (1998)
• [文献書誌] 橘川 武郎: "日本の企業集団" 有斐閣, 238 (1996)
• [文献書誌] 橘川 武郎: "日本の企業グループ" 日本経済新聞社, (1998)