日本の市場規制に関する史的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08630071
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 橘川 武郎 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20161507)
• キーワード: 規制 / 規制緩和 / 市場 / 市場主義 / 危機対応の経営史 / 産業政策 / 政府・企業間関係 / 政府・業界関係

研究概要

日本において市場規制が導入された歴史的事情、それが果たした機能とその反面での問題点を、各産業のケース・スタディーを通じて、実証的に解明した。取り上げた産業は、流通・石油精製・石油化学・電力・金融(銀行)・自動車・コンピュータなどであり、これら検討成果の多くは、すでに学術論文ないし研究書として発表した(具体的に言えば、流通については「11研究成果」の[雑誌論文]の1、3、7、10。石油精製については[雑誌論文]の4、9と[図書]の2。石油化学については[雑誌論文]の5。銀行のついては[雑誌論文]の6。電力と自動車については雑誌論文]の8。)まだ、未発表のコンピュータのケイス・スタディについても、現在、日本電気に焦点を合わせた業績を執筆中である。本研究では、上記の各産業についてのケース・スタディをふまえて、日本の政府・企業間関係や政府・業界間関係の全体像についても、仮説の提示を試みた。戦後日本経営史研究の新視角を提示した「11研究成果」の[雑誌論文]の2、産業政策を分析するに当たっての企業の視点の重要性を強調した同8、消費の側からのアプローチの重要性を指摘した同10、安易な「市場主義」論を批判的に検討した同11、集積する中小企業の役割に注目した[図書]の1などが、その成果である。
本研究を通じて明らかになった最も重要な事柄は、日本の政府・企業間関係や政府・業者間関係を考察する場合には、まず政府の役割に光を当てる従来の方法に代えて、第一義的には企業や業界の動向に注目する新たな視角を導入しなければならないという点である。

研究成果

• [文献書誌] 橘川武郎・高岡美佳: "戦後日本の生活様式の変化と流通へのインパクト" 社会科学研究. 48巻・5号. 111-151 (1997)
• [文献書誌] 橘川武郎: "戦後日本経営史研究の新視角-九六〇年代前半の画期性" 経営史学. 32巻・2号. 27-40 (1997)
• [文献書誌] 橘川武郎・高岡美佳: "スーパー・マーケット・システムの国際移転と日本的変容" 森川英正・由井常彦編「国際比較・国際関係の経営史」. 第13章. 279-304 (1997)
• [文献書誌] 橘川武郎: "3人のタイプの異なる石油業経営者日本の政府・業界間関係に関する一考察" 社会科学研究. 49巻・4号. 73-89 (1998)
• [文献書誌] 橘川武郎: "産業政策の成功と失敗石油化学工業と産業政策" 伊丹敬之他編「ケースブック日本企業の経営行動1 日本的経営の生成と発展. case14. 379-404 (1998)
• [文献書誌] 日高千景・橘川武郎: "戦後日本のメインバンク・システムとコーポレート・ガバナンス" 社会科学研究. 49巻・6号. 1-29 (1998)
• [文献書誌] Takeo Kikkawa & Mika Takaoka: "A New Perspective on the Japanese Distribution System:Structure and Trade Practices" Social Science Japan Journal. No.1. 101-119 (1998)
• [文献書誌] 橘川武郎: "経済開発政策と企業戦後日本の経験" 東京大学社会科学研究所編「20世紀システム4開発主義」. 9章. 276-304 (1998)
• [文献書誌] 橘川武郎: "革新的企業者活動の条件出光佐三(出光商会・興産)" 伊丹敬之他編「ケースブック日本企業の経営行動4企業家の群像と時代の息吹」. case8. 198-227 (1998)
• [文献書誌] 橘川武郎: "「消費革命」と「流通革命」消費と流通のアメリカナイゼーションと日本的受容" 東京大学社会科学研究所編「20世紀システム3経済成長受容と対抗」. 3章. 99-137 (1998)
• [文献書誌] 橘川武郎: "日本の企業システムと「市場主義」" 組織科学. 32巻・2号. 15-24 (1998)
• [文献書誌] 橘川武郎(他): "産業集積の本質 柔軟な分業集積の条件" 有斐閣, 316 (1998)
• [文献書誌] 橘川武郎: "GHQ日本占領史第47巻石油産業" 日本図書センター, 140 (1998)